【現場革新】PaintGoが切り拓く「これからの鈑金塗装」──職人不足・品質課題・DXの交差点で

2025-06-25

第1章|今、鈑金塗装業界に起きている構造変化

自動車の鈑金塗装業界は、これまでにない構造的変化に直面している。
悪化する職人不足、工事品質の属人性とばらつき、再修理率の上昇――これらの課題は、顧客満足度や相談基準、得られる利益にまで影響しはじめている。

そこに、国土交通省による指針整備や「Mobility Transparency構想」に賛同する業界動向などを背景に、「作業の要素分解と属人性の削減」「属人性に依らない品質統一化」「工事履歴のログ化」といった新しい視点が流入しつつある。

その流れの中で注目を集めているのが、AIとロボティクスを組み合わせた自動塗装システム「PaintGo」である。

PaintGoの日本市場における技術導入や関連資料の監修は、JARWA(一般社団法人 日本自動車車体補修協会)が行っており、同協会が推進する「Mobility Transparency構想」や「自動車修理"見える化"認定制度」との制度整合性も考慮されている。
また、国の補助金制度の対象化に向けた行政対応も進めている加えて、JARWAによる導入支援体制の整備は、作業工程の省略化にとどまらず、工数の定量化や塗装品質の定義づけと安定化にも大きく役立っている。
こうした本格的なバックアップ体制の構築を受け、塗料メーカーや損害保険会社など関係業界からも高い関心が寄せられている。


▶️ PaintGo 自動車鈑金塗装デモ(YouTube)
(実際の自動塗装デモ映像はこちら)

この動画では、PaintGoが実際にどのように塗装範囲を認識し、均一な仕上がりを実現しているのかが収録されている。まずはこちらをご覧いただくと、以下の本文の理解がより深まるだろう。


第2章|PaintGoとは何か――“塗る”という仕事の再定義

PaintGoは、AIとロボティクスを組み合わせた自動塗装支援システムである。

  • AI画像認識:車体形状や塗装範囲を自動で認識

  • クラウド連携:作業ログや塗装パターンを一元管理

  • 高精度動作制御:熟練者に近い漆装ムラのない仕上がりを再現

これにより、人手に頼らずとも質の高い塗装を再現できる体制が整ってきている。特に中小規模の鈑金塗装工場でも、スモールスタートが可能な点が高く評価されており、導入が進んでいる。


第3章|なぜ開発企業は「鈑金塗装」を選んだのか?

PaintGoの開発企業は、元々AI技術に特化した研究開発型スタートアップであり、視覚認識・動作最適化・自動ルート生成などを根幹技術として持ち、異業種への広い応用可能性を持っていた。

2020年ごろより世界20カ国以上を対象に、産業別に人手不足率、品質のばらつき率、自動化のROI分析を行った結果、自動車鈑金塗装分野における導入効果が最大と判断された。

特に沖縄、東南アジア、欧州では、熟練工の育成体制の不備が深刻で、品質管理や報告性、環境法規対応といった視点からも自動塗装ソリューションに必要性が出ていた。

こうしてPaintGoは2022年、自動車鈑金塗装分野への専門展開を決定し、当初は韓国、タイ、日本などの展開領域でPoCを開始。現在は欧州マーケットも見据えに展開が進められている。


第4章|海外実例にみるPaintGoの実装力

🇰🇷 韓国:仁川の中堅鈑金塗装工場で実用化

2024年、仁川の民間工場でPaintGoが本格稼働。
標準塗装パターン登録・作業ログの自動記録が評価され、保険会社への報告作業も効率化された。

🇹🇭 タイ:バンコク郊外の工場グループでテスト導入

2023年よりテスト導入を開始。塗装効率と品質の両面で効果が確認され、同グループ内の他拠点にも順次拡大中。

🇨🇳 中国:深圳の修理工場でパイロット運用

中国南部の修理ネットワークで実証運用がスタート。塗装精度と作業トレーサビリティの両立を狙った導入。

🇩🇪 ドイツ:Automechanika Frankfurt 2022で技術展示

欧州最大級の自動車アフターマーケット展示会でPaintGoが紹介され、欧州市場でも関心を集めた。


第5章|人の手と機械の知が共創する未来

PaintGoは、人の仕事を奪うロボットではない。
**職人の技を定義・記録し、再現性を持たせるための「知の共創ツール」**である。

将来的には、熟練者の塗装パターンをAIに学習させ、若手や他工場に展開するといった技能伝承の支援にも活用されるだろう。
また、作業ログの蓄積は「Mobility Transparency」の理念とも合致し、修復歴管理や品質保証の裏付けにも資する。


第6章|おわりに──“鈑金塗装”という文化は進化するか?

PaintGoの登場は、鈑金塗装という「職人文化」の破壊ではない。
むしろ、文化の定義と継承を、AIというテクノロジーが支援する時代の始まりである。

人にしかできない仕事と、機械の強みとを共存させる未来へ。
PaintGoは、変化のただ中にある鈑金塗装業界に、静かに、しかし確かに風穴をあけている。


代理店:ニジェス株式会社(JARWA正会員)

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